漁場〜塩たらこ加工編
十一月から一月末にかけて、お腹にたっぷり卵をもったスケソウダラが北海道近海に押し寄せてきます。それを縄と針で釣り上げる「はえなわ漁」は、北海道でも限られた場所でしかおこなわれていない、数少ない漁法です。
水揚げされたスケソウダラを見ると、ピチピチしていて色つやも目の透明感も新鮮そのもの。当然、そのお腹から取り出される卵は、一粒一粒が小さくて皮が薄く、それでいて粒がしっかりしています。そのなかでも、ほどよく熟した真子と呼ばれる卵は、高級食材として関東や京都の料亭などで食されているものです。未熟なものや熟しきったものに比べると、口あたりも味も格段によく、希少ではありますが、椒房庵はそんな真子にこだわります。
魚は死んでも卵はまだ生きているので、そのままにしておくと卵が悪い栄養分を吸ってしまい、品質が落ちてしまいます。いかに早く卵を取り出すかが、卵のうまみを左右します。
手早く取り出し、良質の真子(ほどよく熟した原卵)だけを、鮮度を保ちつつ凍らせないように卵の上に氷を置いて、その日のうちに塩漬け工場へ。北海道の外気は零下ですので、すぐに凍ってしまいます。凍ってしまった卵は使えません。そのために氷を入れて逆に温度を保つのです。また運搬中に卵と卵が擦れ合うことで摩擦熱が出て、卵が痛むこともあります。その摩擦熱を防ぐためにも氷を入れているのです。
卵は塩水を吸いこんだり吐き出したりしますので、水切りを行うために塩水から上げるときには、潮を吐き出したときを狙って取り上げます。それがちょうどいい塩分だからと椒房庵は考えるからです。塩たらこの状態では、ほとんど味付けには手を加えません。自然の卵の味を生かすためと、後で椒房庵独自の味をいれ込む為です。
|